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創成科学研究科の武宮淳史准教授が日本植物学会賞奨励賞を受賞!

(2016年11月30日 掲載)

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大学院創成科学研究科理学系学域生物学分野の武宮淳史准教授が、「気孔開口におけるフォトトロピンシグナル伝達機構の研究」で平成28年度(第13回)日本植物学会賞奨励賞を受賞し、9月17 日(土曜日)に宜野湾市で開催された「日本植物学会第80大会」において表彰されました。

公益財団法人日本植物学会は、1882 年に創立され130年を超える伝統ある学会です。平成16年度より社団法人日本植物学会賞(以下日本植物学会賞)を制定し植物学に関する研究業績の表彰を行っており、奨励賞は、優れた研究を行い将来の発展が期待される若手研究者に授与されます。

植物は光を光合成に必要なエネルギーとして利用するのみならず、周囲を取り巻く環境情報として利用することにより、自身の成長を最適化しています。フォトトロピンは植物に特有な青色光受容体で、光屈性や葉緑体定位運動、気孔開口、葉の伸展など、光合成機能の最適化や成長の促進に関わる多様な光応答を制御します。フォトトロピンは光受容に伴い活性化する受容体キナーゼであり、何らかの基質タンパク質をリン酸化することで光情報を伝達すると考えられてきましたが、その実体については不明でした。気孔を構成する孔辺細胞では、フォトトロピンにより受容された光情報は、効果器としてはたらく細胞膜H+-ATPaseを活性化し膜電位を過分極させ、気孔開口の駆動力を形成します。しかし、フォトトロピンがH+-ATPaseの活性化を導く情報伝達の仕組みについてはこれまで謎に包まれていました。

武宮准教授は、赤外線サーモグラフィという温度を可視化する特殊なカメラを用いて気孔開口を視覚的に検出するシステムを構築し、シロイヌナズナ突然変異体を対象とした大規模スクリーニングから、気孔開口の必須因子として働くBLUS1(BLUE LIGHT SIGNALING1)キナーゼを発見しました。つぎに、孔辺細胞を用いたリン酸化プロテオーム解析から、BLUS1がフォトトロピンにより直接リン酸化されること、このリン酸化はシグナル伝達に必須のメカニズムであることを証明し、長らく不明であったフォトトロピンのリン酸化基質を世界に先駆けて同定しました。さらに、BLUS1の下流で情報伝達に関わるPP1ホスファターゼを同定し、当該因子が気孔開口の光情報伝達のみならず、気孔閉鎖を導く植物ホルモン・アブシジン酸情報伝達とのクロストークを仲介することを明らかにしました。

これらの成果は、植物の光応答およびシグナル伝達研究のモデルとなり、植物科学や光生物学の研究分野に大きな前進をもたらすもので、世界的にも高く評価されており、今後、益々の活躍と研究の発展が期待されます。

詳細は以下からご覧になれます。(公益社団法人 日本植物学会Webページ)
http://bsj.or.jp/jpn/members/information/2813.php