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創成科学研究科の清水則一教授がボスニア・ヘルツェゴビナでリモートセンシング技術による支援と交流を進めています

(2017年12月 6日 掲載)

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応用衛星リモートセンシング研究センター副所長で創成科学研究科工学系学域社会建設工学分野の清水則一教授がボスニア・ヘルツェゴビナのトゥズラ大学(University of Tuzla)に招聘され講演を行うとともに、学長およびトゥズラ市長と会談し、今後の技術協力と学術交流について意見交換しました。

トゥズラ市は、古くから地下の岩塩層を流れる地下水を汲み上げて塩の生産を行っています。塩水汲み上げによる岩塩層の空洞化のため地盤沈下が生じ、市街地で地表面が最大で約15mも沈下するなど広域的な地盤沈下に悩まされてきました。大規模沈下により多くの建物が破壊されてきたため、塩水汲み上げが見直され徐々に沈下は小さくなり、2000年代には取水は取りやめられ、沈静化していることが2004~2007年の広域的なGPS観測で確認されていました。

清水教授は、昨年、ボスニア・ヘルツェゴビナを訪問した際にその状況を知り、その後の沈下挙動について、SAR(合成開口レーダー)衛星のデータを解析し、トゥズラ大学のサビッド・ゼカン(Sabid Zekan)教授とともに、トゥズラ市の広域的地盤沈下の現状を評価してきました。このたび、興味ある成果が得られ、現地調査と講演のため当地に招聘されました。

まず、11月15日に、ヤスミン・イマモヴィッチ(Jasmin Imamović)トゥズラ市長と会談するとともに、市長を含む市の幹部に、最新の沈下状況をブリーフィングしました。また、翌16日には、トゥズラ大学長のネルミナ・ハジグラヒッチ(Nermina Hadžigrahić)教授と会談し、このたびのゼカン教授との共同研究の成果や今後の学術交流について意見交換をしました。会談後は、土木、鉱山、地質工学に関連する学科の教員、学生、州政府の都市計画局幹部、さらに、首都サラエボなどの他都市からの大学教員、技術者など150名以上の聴衆に対し、「衛星技術による地盤沈下と地すべり挙動の監視」と題する講演を行い、このたびのトゥズラ市の地盤沈下観測結果について主要関係者と意見交換を行いました。

清水教授のSAR解析の結果は、これまでのトゥズラ市地盤沈下の観測結果と整合し沈下は収束に向かっていて現時点では大きな問題はないものの、今後も継続した監視が必要であること、また、SAR解析が経済的にも実用的にも優れていることが理解され、今後の監視に対する協力体制の構築について議論が進みました。

今回の訪問は、地元のマスメディアにも注目され、2つのTV局からインタビューを受け市長、学長との会談、大学での講演について、2日にわたりニュースとして放映され、この話題に対する関心の高さがうかがわれます。

なお、上記の訪問に先立ち、隣国のセルビアの地盤工学会からも招聘を受け、11月13日にベオグラード(Belgrade)大学でブランコ・ボジック(Branko Bozic)工学部長と会談および学内で「GPSによる三次元地盤変位の精密連続計測の実現と国際推奨法の制定」と題する講演、また、翌14日にはシャバツ市で開催された第7回セルビア国際地盤工学会議で「地盤の安定評価手法としての衛星技術による変位モニタリングの実際」と題して基調講演を行い、今後の連携について意見交換しました。

セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナとも地すべりなど地盤災害発生地域が国内に広く分布しており、その監視に対する衛星技術の活用が今後注目され、山口大学が貢献できるものと思われます。