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水を汲んで魚類の産卵をモニタリング!-放精による環境DNA濃度の急上昇から産卵行動の有無と規模を知る-

(2020年11月 4日 掲載)

山口大学環境DNA研究センター 辻冴月(つじさつき)学術研究員と環境総合リサーチ(株)芝田直樹(しばたなおき)氏の研究グループは、2種のメダカを用いた水槽実験および野外調査によって、産卵行動によって放出された精子が水中の環境DNA濃度の一時的な急上昇を引き起こすことを明らかにしました。また、その増加量は放卵・放精を伴う産卵行動の回数のみに影響を受け、見せかけの産卵行動である偽産卵の回数は反映しないことが示されました。これらの結果は、環境DNA分析が生物の分布調査だけでなく、産卵調査にも有用な技術となり得ることを示唆しています。本成果は、2020年10月19日に国際学術誌「Environmental DNA」電子版、Special Issueに掲載されました。

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topic_20201104_3-1.png 図.放精に起因する環境DNA濃度の急上昇

研究成果のポイント
●2種のメダカを用い、産卵行動によって放出された精子が繁殖期に水中の環境DNA濃度を急上昇させる主要因であることを実証しました。
●メダカの産卵時間帯の前後における環境DNA濃度の違いは、放卵・放精を伴う産卵行動の回数を反映することが示されました。
●各メダカの野外生息地においても、繁殖期にのみ産卵時間帯の後に環境DNA濃度の急上昇が観察されました。
●本研究の成果は、環境DNA分析が生物の分布調査だけでなく、今後は産卵調査にも有用な技術となり得ることを示唆しています。

論文発表の概要
研究論文名:Identifying spawning events in fish by observing a spike in environmental DNA concentration after spawning
著者:辻冴月(山口大学)、芝田直樹(環境総合リサーチ(株))
公表雑誌:Environmental DNA
公表日:10月19日(月)