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かさ高い脂肪鎖を「鈴木-宮浦型カップリング反応」に適用することに成功-ハイブリッド触媒系の新提案 -

(2018年7月 3日 掲載)

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山口大学大学院創成科学研究科工学系学域応用化学分野の西形孝司准教授と東京大学生産技術研究所砂田祐輔准教授らのグループは、1つの反応系で「有機金属種」と「ラジカル種」という2つの活性種を使用可能な"ハイブリッド触媒系"を開発し、炭素周りの4つ目の置換基としてアルケニル基を導入することに成功しました。今回の研究成果により、アルケニル基を持つ第四級炭素中心を効率的に合成できるようになります。この研究成果は、異なる2つの活性種を安定的に1つの反応系で使用可能にした初めての例であり、クロスカップリング研究分野に大きなブレークスルーを与えただけでなく、将来の高機能な有用物質合成の実用化につながることが期待されます。  

2010年ノーベル化学賞は、パラジウム触媒による鈴木-宮浦クロスカップリング反応が対象分野でした。この手法は、医農薬品や電子材料など様々な有用物質を得ることが可能です。しかし、大きな構造(かさ高い)を持つアルキル基(脂肪鎖)をクロスカップリング反応に適用することは難しく、特に、医農薬品の合成中間体として有用な第四級炭素中心の合成は極めて困難でした。炭素の周りには4つまで置換基を配置することが可能ですが、第四級炭素中心の合成に必要な最後の4つ目を配置しようとすると、先に配置された置換基のため反応点が立体的に非常に混み入ってしまい、特別に強い試薬がなければ反応が進行しません。これでは医農薬品などの高機能性分子を構築できず、有機合成上の残された課題でした。

この研究成果は『ACS Catalysis』(IF=11.384)に6月28日に掲載されました。(DOI: 10.1021/acscatal.8b01572

研究の詳細は PDFファイル[328KB]をご覧ください。