トピックス

第四級炭素を持つ1,4-ジカルボニル類の合成を実現~有機触媒と遷移金属触媒を組み合わせるハイブリッド触媒系が鍵~

(2021年4月19日 掲載)

山口大学大学院創成科学研究科応用化学分野の西形孝司教授(若手先進教授※)、平田剛輝助教(特命)、本学大学院生の黒瀬彩子さんと石田優斗さんと共に、有機触媒と遷移金属触媒を組み合わせることでケトン誘導体のα位を第三級アルキル化し、立体的にかさ高い第四級炭素を持つ1,4-ジカルボニル類の効率的な合成に成功しました。従来、1,4-ジカルボニル類は、エノラートカップリングやハロゲン化アルキルとエノラートとの求核置換反応で合成されていました。しかし、この手法では、かさ高い第四級炭素を合成することは非常に困難でした。この原因は、エノラートと立体的に反応点が込み入った構造である第三級アルキル反応剤の活性が非常に低いためでした。そこで、当該グループはピロリジン触媒でケトンをエナミンへと活性化し、このエナミンの炭素―炭素二重結合に対して、ハロカルボニルと銅触媒から生成した第三級アルキルラジカルを付加させる手法を開発することで、問題の解決を果たしました。本手法により、様々な第四級炭素を持つ立体的にかさ高い1,4-ジカルボニル類を合成することが実現しました。

この研究成果は『Angewandte Chemie, International Edition』(IF=12.257)に掲載されました。

topic_20210419_1-1.png

論文情報

雑誌名:Angewandte Chemie, International Edition, 2021, Early View.
論文名:Direct α-Tertiary Alkylations of Ketones in a Combined Copper-Organocatalyst System
著 者:Ayako Kurose, Yuto Ishida, Goki Hirata, and Takashi Nishikata*(*責任著者)
DOI:10.1002/anie.202016051

※若手先進教授(Young Advanced Professor)とは、山口大学が旗手として期待する研究者に付与する名称です。山口大学が注力する「研究拠点群」である「生命分子インターネットワークセンター」の西形孝司センター長もそのひとりです。