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立体的に大きな光学活性エーテル化合物の選択的な合成に成功

(2021年1月19日 掲載)

山口大学大学院創成科学研究科応用化学分野 西形孝司教授(若手先進)、関西学院大学理工学部 白川英二教授、広島大学大学院先進理工系科学研究科 安倍学教授、鳥取大学大学院工学研究科 野上敏材教授、東京工業大学科学技術創成研究院 小池隆司助教らのグループは、炭酸セシウムを塩基とすることで第三級アルキルハロゲン化物(α-ブロモアミド化合物)とアルコールとの立体特異的求核置換反応によるエーテル化合物の合成に成功しました。従来、光学活性な第三級アルキルハロゲン化物を用いる求核置換反応は、その立体障害のため立体特異的反応は困難でした。開発した手法を利用すると、立体的に非常に大きくかつ光学活性な反応部位にアルコールを選択的に反応させることができます。1世紀以上にわたり課題として認識されていた「立体的に大きなアルキルハロゲン化物とアルコールの立体特異的な反応」を達成できた点が本研究のポイントです。

この研究成果は『Angewandte Chemie, International Edition』(IF=12.257)にホットアーティクルとして掲載され、表紙にて研究がハイライトされました。
(doi:10.1002/anie.202010697)

発表のポイント

◆1世紀以上前からの課題として認識されている、かさ高いエーテル結合の形成に成功しました。
◆光学活性第三級アルキルハロゲン化物を用いたアルコールによる立体特異的な求核置換反応を発見しました。
◆第三級アルキルハロゲン化物であるα-ブロモアミド化合物を塩基である炭酸セシウムとともに用いることが立体特異的反応の鍵であることを発見しました。

研究の詳細はこちら

 topic_20210119_1-1.png開発した立体特異的エーテル化反応

今後の展開

今回開発した反応は、立体的に大きな光学活性エーテル化合物を自在に合成できる第一歩となる結果です。今後は、求核剤をアルコールからアミンへと変えることで光学活性な非天然型アミノ酸も合成できるように、反応系をさらに工夫していきます。
本研究は、JSPS科研費挑戦的萌芽研究(18K19182)、JST 戦略的創造研究推進事業 CREST「アニオンラジカル制御が拓く革新的電子触媒系(研究代表者:白川英二(関西学院大学))」、公益財団法人内藤記念科学振興財団および公益財団法人徳山科学技術振興財団の助成を受けて実施したものです。

論文題目

題目:Chemistry of Tertiary Carbon Center in the Formation of Congested C?O Ether Bonds
著者:Goki Hirata, Kentarou Takeuchi, Yusuke Shimoharai, Michinori Sumimoto, Hazuki Kaizawa, Toshiki Nokami, Takashi Koike, Manabu Abe, Eiji Shirakawa, Takashi Nishikata
公表雑誌:Angewandte Chemie International Edition
公表日:2020年12月23日
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202010697