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オレフィン異性体混合物を精製することなく選択的反応に適用可能な反応法開発:単一のオレフィン生成物を与える簡便な反応技術

(2021年9月10日 掲載)

創成科学研究科応用化学分野の西形孝司教授(若手先進教授※)らは、鉄触媒存在下、立体的に大きな第三級アルキル臭化物(1)と異性体が混合した内部オレフィン(2)を鉄触媒存在下で反応させると、対応する生成物(3)を単一の異性体(E体)として得ることに成功しました。
従来、精密な有機合成反応を実施しようとする場合、使用する原料の異性体をきちんとどちらか一方に精製しておく必要がありました。今回使用した原料である内部オレフィン(2)は、EとZの2種類の異性体が存在します。異性体はこの原料を合成する過程で生じますが、それらを単一のものに精製することは非常に困難でした。
本研究で開発された鉄触媒反応は、反応機構の詳細は不明ですが、(2)がどのような異性体の混合物であっても単一の生成物を与えることがわかりました。この画期的な特徴を持つ本反応は、今後、様々な炭素-炭素二重結合を持つ有機分子合成への応用が期待されます。本研究成果は『ACS Catalysis』(IF=13.084)に掲載されました。

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論文情報
論文名Iron-catalyzed Stereo-convergent tertiary alkylations of E- and Z-mixed internal olefins with functionalized tertiary alkyl halides
著者Yusei Nakashima, Junki Matsumoto, Takashi Nishikata*
掲載誌ACS Catalysis, 2021, 11, 11526-11531.
URLhttps://pubs.acs.org/doi/10.1021/acscatal.1c03009

※若手先進教授(Young Advanced Professor)とは、山口大学が旗手として期待する研究者に付与する名称です。
山口大学が注力する「研究拠点群」である「生命分子インターネットワークセンター」の西形孝司センター長もそのひとりです。