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簡便な手法で医農薬に有用なビニルピリドン骨格を構築~従来の常識を覆す反応技術

(2021年9月28日 掲載)

創成科学研究科工学系学域応用化学分野の川本拓治助教、池田瞬也大学院生、上村明男教授らのグループは、無水トリフルオロメタンスルホン酸とケトンに対して2当量以上の2-フルオロピリジンを作用させ、最後にNaOH水溶液で処理を行うと効率よくビニルピリドンが得られること見いだしました。

従来、無水トリフルオロメタンスルホン酸とケトンに対して嵩高いピリジンなどの塩基を作用させると、ビニルトリフラートが得られることは古くから知られています。ビニルトリフラートは遷移金属触媒反応における求電子剤として広く利用されています。最近、川本助教らのグループはビニルトリフラートに対してラジカル開始剤として作用させると、医農薬において有用な炭素-CF3結合を有する化合物を合成できることを報告しています。その研究の過程において、ビニルトリフラート合成の塩基として2-フルオロピリジンを用いると、ビニルトリフラート以外の化合物がわずかに得られることを見いだしました。2-フルオロピリジンの使用量を増加させると、ビニルピリドン骨格を効率的に合成することができることがわかりました。使用量を変化するだけで、生成物が変化する本技術は非常に画期的です。なお、得られたビニルピリドンは医農薬への応用が期待されます。

本研究成果は『The Journal of Organic Chemistry』に掲載されました。

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論文情報

論文名 Synthesis of 1-(1-Arylvinyl)pyridin-2(1H)-ones from Ketones and 2-Fluoropyridine
著者 Takuji Kawamoto, Shunya Ikeda, Akio Kamimura
掲載誌 J. Org. Chem. 2021
URL https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.joc.1c01615