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植物の細胞が低温を感じる部位(細胞小器官)を特定~動物細胞との共通性も~

(2022年4月 7日 掲載)

山口大学大学院創成科学研究科の武宮淳史准教授の研究グループは、宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センターの児玉豊教授の研究グループと共同で、植物の細胞が低温を感じる部位(細胞小器官)を特定しました。動物の細胞では、TRPタンパク質と呼ばれるセンサー分子が細胞膜で保持されて温度を感じています(2021年ノーベル生理学医学賞)。しかし植物はTRPタンパク質を持っていないため、植物がどのように温度を感じるのかは、長年の間、解明することができませんでした。児玉教授の研究グループは、2017年に植物で初めてとなる低温域の温度センサータンパク質(フォトトロピン)を発見後、フォトトロピンが細胞内のどこで低温を感じるのかを調べてきました。今回、様々な解析の結果、動物のTRPタンパク質と同様に、フォトトロピンが細胞膜に保持されると植物細胞による低温感知が可能になることを発見しました。TRPタンパク質とフォトトロピンは、細胞膜への保持メカニズムは異なりますが、動物細胞と植物細胞が共通の細胞小器官(細胞膜)で温度を感じているということがわかりました。

本研究成果は、3月31日、学術誌「PNAS Nexus」オンライン版で公開されました。

研究の詳細はこちら

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研究のポイント                                  

◆ 低温センサー分子(フォトトロピン)が細胞内のどの部分で働くのかを調査した

◆ フォトトロピンが細胞膜に保持されると植物細胞による低温感知が可能となった

◆ センサー分子が細胞膜に保持されると温度を感じることは植物と動物で共通する

 

論文情報                                    

題 目 : The localization of phototropin to the plasma membrane defines a cold-sensing compartment in Marchantia polymorpha
雑誌名 : PNAS Nexus
著 者 : Satoyuki Hirano, Kotoko Sasaki, Yasuhide Osaki, Kyoka Tahara, Hitomi Takahashi, Atsushi Takemiya and Yutaka Kodama
U R L : https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgac030
掲載日時: 令和4年3月31日

 

著者(氏名)*印は同等の貢献

平野 慧潔*(宇都宮大学農学部4年)

佐々木 琴子*([当時]宇都宮大学大学院地域創生科学研究科)

大崎 益秀*([当時]宇都宮大学大学院農学研究科)

田原 京佳(山口大学大学院創成科学研究科1年)

高橋 ひとみ(宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター・実験補助員)

武宮 淳史(山口大学大学院創成科学研究科・准教授)

児玉 豊(宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター・教授)