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"Salting-in"効果を利用したイオン液体中への高分子可溶化メカニズムを分子レベルで可視化

(2022年9月29日 掲載)

イオンのみで構成される室温付近で液体状態の塩である「イオン液体」は、不揮発性や不燃性、高いイオン伝導性など、電池やキャパシタをはじめとする電気化学デバイス用の電解質材料として広く研究されています。しかしながら、一部の高分子との相溶性が著しく低い(イオン液体中に高分子が全く溶解しない)ため、高分子網目を用いたイオン液体のゲル化が不可能であり、実用を想定した材料化の面で大きな課題を抱えていました。

大学院創成科学研究科(工学系)博士前期課程化学系専攻の柴田雅之さん(2020年度修了)と博士後期課程物質工学系専攻1年の澤山沙希さん(藤井健太教授研究室)は、電解質塩を溶液中に添加することで発現する塩溶効果(Salting-in)に着目し、これを利用してホスホニウム型イオン液体中にポリエチレングリコールを可溶化した高分子溶液の精密構造解析を実施しました。これにより、特異的な高分子可溶化における電解質塩(リチウム塩)の役割を明らかにするとともに、溶存する高分子鎖とイオンの相互作用を分子レベルで可視化することに成功しました。

本研究成果は、2022年9月5日にJ. Mol. Liquids,366, 120255 (2022)に掲載されました。

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タイトルStructural aspect on "Salting-in" mechanism of PEG chains into aphosphonium-based ionic liquid using lithium salt"
著者M. Shibata, S. Sawayama, M. Osugi, and K. Fujii*
掲載雑誌J. Mol. Liquids,366, 120255 (2022).
掲載日2022年9月5日